マスタークラス

ヴラトコヴィチのホルンマスタークラス(2022年5月9日)

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 5月9日月曜日に、ホルン奏者のラドヴァン・ヴラトコヴィチのホルンマスタークラスに、ドルチェ・アートホールOsakaへ行ってきました。私は、ホルンは吹きませんが、ヴラトコヴィチの演奏は、レ・ヴァン・フランセのコンサートでこれまで、何回も聴いてきましたので、どんなレッスンをされるのか、興味があって、行きました。

 

 私は、ホルンの曲をあまり知りませんので、マスタークラスの曲の、モーツァルト:ホルン協奏曲 第2番と、ヒンデミット:4本のホルンのためのソナタを、直前に聴きました。モーツァルトのレッスンの前に、BRIZ(ブリッツ)ホルンについての話が、40分くらいありました。話の内容を、書いておきます。

 

ブリッツホルンについて

 

 司会の方が、ヴラトコヴィチに質問して、答える形でした。英語でした。以下は、司会の方は「司」、ヴラトコヴィチは「ヴ」と書きます。

 

 司:「ブリッツホルンとの出会いを教えてください」

 

 ヴ:「ブリッツホルンは、中国の天津にあります。私が、コンサートで中国に行った時に、行きました。工場の状態も良かったですし、職人に対するケアも、とても良いと思いました。私の生徒に、ブリッツホルンをすすめて、買った人は、とても良い楽器だと、喜んでいます」

 

 司:「ヴラトコヴィチさんの、これまでの楽器遍歴を教えてください」

 

 ヴ:「1968年、6歳の時に、私は、アメリカにいましたが、中古のメロホンを始めました。5ドルでした。その後、ヨーロッパに行きまして、Fシングルのホルンを買いました。まだ、小さかったので、首にストラップをかけて使っていました。13-14歳の時に、フランスのセルマーのコンペンセーティング、ダブルホルンを買いました。今は、もうないと思いますが、バルブがピストン式のものです。

 

 その後、仕事をドイツですることになりますが、同僚に、『そのホルンを使っていたら、君に将来はないよ』と言われ、その同僚がスペアで持っていた、パックスマンのダブルホルンを使うようになり、数十年、ずっとパックスマンのホルンを使っていました。そして、最近、ブリッツホルンに出会いました」

 

 ここで、ブリッツホルンのモデルの説明が司会の方から、ありました。

 

 司:「2000TPは、最上級モデルです。マットがかかっています。ベルのハンマーの跡を残しています。2000SCは、主力モデルで、ヴラトコヴィチさんも、これをメインに使われています。ヴラトコヴィチさんは、今まで、2000TPと2000SCしか、吹かれたことはありませんでしたが、選定品のために、2000Yを吹かれたら、すごく気に入られたそうです。学生さんには、2000Yは、とてもおすすめです」

 

 ヴ:「ブリッツホルンは、かまえやすいです。右に行ったり、左に行ったりしません。2000TPは、パワフルで、オーケストラの中で演奏するのに向いています。SCは、自由自在という感じです。私は、今はオーケストラで、演奏していませんので、2000SCをメインに使っています。3年前に、チャイコフスキーコンクールで優勝した、中国のユン・ゼンも、2000TPを使っていて、素晴らしい音でした」

 

 司:「楽器の選び方について教えてください」

 

 ヴ:「楽器の選び方については、シカゴ交響楽団にいた、フィリップ・ファーカスが書いた『The Art of French Horn Playing』を読んでください。日本語訳本も出ていると思います。私から言えることは、人の意見を聞かないことです。自分が試奏してみて良いと思ったもの(comfortable, beautiful sound) を買うことです」

 

 レッスンは、ひとり40分くらいでした。レッスンは、ドイツ語でした。

 

モーツァルト:ホルン協奏曲 第2番

 

 生徒さんが、第1楽章を演奏し終わり、

 ヴ:「今の演奏を自分でどう思いましたか?」

 生:「たくさんの人の前で演奏したので、緊張しました」

 

 ヴ:「私も、コロナでたくさんの演奏会がなくなって、久しぶりに演奏すると、緊張しました。人前で演奏する機会を増やすことが大切です。私も、今日は大阪、そして名古屋、大阪、北海道、東京と演奏していくうちに、緊張感は減ってきます。緊張のレベルを0~10として、0が完全にリラックスしている状態として、今の演奏の緊張感は、数字で言うと、いくつでしたか? 」

 

 生:「7です」

 ヴ:「7なら、悪い状態ではないです。(客席に) この中で、ホルンを吹く方は、どれくらいいますか。手を挙げてください」

大半の人の手があがりました。

 

 ヴ:「(生徒さんに)客席のみんなは、あなたが良い演奏をするのを待っています。敵対する人たちではないです。ホルンは、小さなミスは普通のことです。気にせずに進んでいくこと。ホルンは、そちらの椅子に置いて、オペラ歌手が歌うような気持になって、ピアノに片手をついて、笑顔で、(ホルンパートを)歌って下さい」

 

 ピアノと一緒に、冒頭からしばらく歌われました。

 

 ヴ:「あなたは、とても良い声をしています。楽器を通して、歌ってください。」譜面台がかなり高かったので、下げて、「あなたには楽譜は必要ありません。すでに、あなたの体に入っているはずです。暗譜をして演奏すると、音楽に集中できるので、暗譜は大切です」

 

 ホルン演奏が終わり、

 ヴ:「(客席に)最初の演奏とどう変わりましたか?」

ひとりのお客さんが指名されて、「最初は、前だけにせまくという感じでしたが、今は、広くなった」とジェスチャーで、答えました。私も、伸びやかな演奏になったな、と思いました。

 

 ヴ:「第2テーマのところで、高い音から低い音に行くところで、いろいろなことが起こってしまうので、音は高くから、低く行くけれども、自分のイメージでは、低くから高く行くような感じで」

 

 ヴ:「ホルンがあたたまって、音程が高くなってきているので、ピアノの音を聴いて、高くならないように意識してください」

 

 時間が少なくなってきて、

 ヴ:「(生徒さんに)何か質問はありますか」

 生:「Lのファゴットが入るところが、ホルンはソリストのように演奏した方がいいのか、オーケストラの伴奏のように演奏した方がいいのか、いつも迷います」

 

 ヴラトコヴィチが、ここの部分のファゴットパートをホルンで一緒に演奏されていました。

 

 最後のひとことは、「ホルン吹きには勇気が必要」

 

 ヒンデミットのレッスンについても書こうと思いましたが、マスタークラスの日から、時間が経過して忘れてしまっていて、書けません。

 

 生徒さん4人の演奏が終わると、まず、ヴラトコヴィチは、ヒンデミットの生涯について話されました。こちらの生徒さんにも、最後に「質問はありませんか」と聞かれて、生徒さんは、下のパートについて、質問されていました。

 

 ヴラトコヴィチのマスタークラスの感想は、とにかく優しいな、と思いました。最後に、生徒さんに質問する先生を初めて見ました。

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